肺がんから身を守ることのできる第一の選択は、禁煙でしょう。その他に大気汚染や有害物質(発がん物質)を避けることも重要ですが、これは自らできません。
タバコによる肺
(左)非喫煙者は綺麗なピンク色です。
(右)喫煙者はタールで真黒に汚染されています。
喀痰中の組織球細胞
(左)非喫煙者で細胞はきれい。
(右)喫煙者でタールを含んで汚れている。
■手術中(内視鏡手術)。
切開が小さく患者さんの負担にならない。
1. 手術
手術では、がんの大きさとリンパ節転移の状況から部分切除、区域切除、肺葉切除、肺全摘術が行われます。近年では侵襲の大きな開胸手術が行われることは少なくなってきました。かわって侵襲の少ない内視鏡的手術が多くなってきました。
2. 放射線治療法
放射線治療は、進行がんに行われたり、手術後リンパ節に転移が認められた時に行われる。他に重粒子線療法や陽子線照射療法もあります。
3. 化学治療法
進行がんの治療に行われる。 抗がん剤どうしの組合わせや、分子標的薬剤との組み合わせ、放射線治療との組み合わせや手術後のリンパ節転移のある患者さんに行われることが多い。また最近開発された免疫チェックポイント阻害剤による治療も行われる
■診断から治療へのステップ。
上述した治療法の選択には、肺がんの進行度、患者さんの喫煙の有無、全身状態、呼吸機能、腎機能、肝機能、循環器状態、中枢神経系の状態の把握が必要です。これらの状態によって治療法も変わってきます。
手術では、年齢、呼吸機能、心機能、脳の機能、肺気腫やCOPDのような呼吸器併発症によって手術適応が決まり、前述のような切除方法も変わってきます。
化学療法(抗がん剤)では、主に進行性肺がんに行われますが、年齢、全身状態、肺機能障害(特に感染症)、腎機能、肝機能、心機能、脳の機能などによって適応が異なり、選択薬剤などが決まります。
免疫療法では、最近開発された方法でオブジーボやキートル−ダなどがあります。進行がんでの効果が期待されていますが未だ多くの課題があります。
放射線療法では、原発巣が限局しており、縦隔リンパ節転移のみられる患者さんで、呼吸機能障害(肺感染症、繊維症など)の程度により適応が決まります。また手術後に縦隔リンパ節に転移のみられた時や、化学療法療法との合併療法としても適応があります。
[1]レントゲンとCT写真
■I期肺がん(抹消型、腺がん)。3cmの大きさになればX線写真でも見える。しかし腺がんの特徴は見えない(矢印)。
■CTでは明瞭に腫瘍陰影として見える。腺がんの特徴(とげとげ)も見える。
[2]PET画像
■PETでは全身の転移の検査に有効である。
■矢印のところが「がん」病巣である。左はCT、中と左がPETで「がん」病巣が明瞭に見える。
[3]内視鏡写真
■早期がん。ポリープ状に見えるところが「がん」(矢印)。
■早期肺がん(中心型)の検査法
多機能蛍光内視鏡。通常内視鏡、PDD、AFD、PDTができる気管支鏡システム。
[4]切除肺
■内視鏡手術による摘出標本。白の矢印がCT上の肺がん病巣。黒の矢印が摘出した肺がん組織。左上が術前に診断した細胞診。右下は手術によって摘出した肺がん(腺がん)組織像。
■肺がん摘出標本。進行がん(腺がん)。白いところが肺がん。